一人ひとりが主役~各隊の今~


偉大な人になれたとしたら、それはとても素晴らしいこと。でも、スーパーで重い荷物をレジに持ち上げるお年寄りにさっと手を貸すことができたり、困った事態に直面しても、何かしら工夫をしてユーモラスに乗り越えられる人も同じくらい素晴らしいと思う。自分の住んでいる場所で輝く人は、きっと笑顔の輪を広げていく。

各部門の目標
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ビーバー隊(5歳~小2の2年間)

ビーバースカウトがめざすものは、ずばり「ともだちとなかよく遊ぶこと」。活動はだいたい月に2回か3回で、いずれも日曜日。集合した成城教会の中でクラフトや室内ゲームで遊ぶこともあるけれど、少しの時間でも外で身体を動かして遊んでいます。成城3丁目緑地は14団ビーバースカウトのお気に入り。豊かな緑の中で自然に溶け込んだり、無心に過ごしたり、生命の不思議を発見したり。四季の移り変わりは、こんなに近くでも心ゆくまで味わうことができます。アスレチックや味覚狩り、楽器作り、博物館見学、ユニセフ募金、クリスマス会、キャンプファイヤーなど、たくさんの「はじめての体験」や「びっくり」、そして「チャレンジ」に出会いながら、自分と友達はどちらも同じ大切な存在だということを味わってもらいたいと考えています。

 ☆ある日のビーバー隊より
「イースターエッグハンティング」

復活祭ミサの後、カブ隊と一緒に成城3丁目公園までやって来たビーバー隊。
今日は見学に来た1年生が2人もいるし、カブスカウトと一緒なのでウキウキしちゃう。今日のゲームは、リーダーたちがこっそり茂みの中に隠したエッグ(ちょっとしたお菓子入りの卵形の容器で、リーダー手作りの品)をチームで協力して見つけるもの。見つけてよいのは1人2つまで、がルール。隊長の「よーい、スタート!」の号令とともに一斉に走り出し姿が消えたと思うと、ほどなく「あった!」「見つけたよ!」とエッグを高く掲げて見せてくれる。うまく見つけられない仲間のためにもう一度探しに行ったり、制限時間のカウントダウンを仲間に知らせたり、それはもう一生懸命。見つけたエッグの1つは自分のもの。そして、もう1つは誰かたいせつな人へのプレゼント。スカウトが頭に描いたのは、誰の顔だったのかな。


カブ隊(小2~小5の3年間)

群れて遊ぶことが最も好きな年代のカブスカウトは、6人くらいの小さな「デン(組)」でいつもまとまって行動しています。ボスになるのはたいてい一番年上のスカウト。デンリーダー(組の保護者役。スカウト保護者が担当)にちょっとだけ手伝ってもらいながら、年下のスカウトたちの面倒をみつつ組をまとめていきます。3学年からなるスカウトたちはロープワーク、組対抗ゲーム、登山、写真コンテスト、壁新聞づくりと発表…などあらゆる分野の活動を楽しく体験していきます。スカウトたちはおもしろがって遊んでいるのですが、実はカブスカウトのめざす「よい仲間であること」をいつも意識するような仕掛けがあちこちに盛り込まれ、またいろいろな体験から「これは好きだな」とか「もっと知りたい」「苦手だけどやってみたら楽しかった」と自分自身を発見できるような工夫もされています。活動は月に2回から3回で、たいてい日曜日。カブスカウトのキャンプは春には2泊3日、夏には3泊4日の宿舎泊です。

 ☆ある日のカブ隊より
「世界のどこかに住んでいる、なかまのために」

11月になると、カブ隊の最高学年のスカウトたち(小学4年生)はユニセフ「ハンド・イン・ハンド」の募金活動に向けて準備開始。品川にあるユニセフハウスを訪問し、説明をしっかり聞いたり展示物をさわって、ユニセフの活動やお金がどう使われているかを学んできます。募金当日、団のみんなで使う募金箱やポスターを作るのもカブ隊の任務なので、組のなかまと一生懸命取り組みます。12月第一週目の日曜日。成城学園前駅、祖師ヶ谷大蔵駅、喜多見駅での募金活動は寒いけれど、お金を入れてくださった方に大きな声でお礼を言うのは忘れない。集まったお金を丁寧に数えて、成城2郵便局からユニセフに送金するのも、彼らの重要なミッションです。遠い国で困っている友だちの役に立つように、一日でも早く届くといいな…と、遠くに思いをはせることもこの活動の重要なポイントだけど、ユニセフの活動を後輩に「伝える」ことや、ポスターを「描いて表現する」こと、団の仲間の前に立ち活動の流れと送金金額、感想を「報告する」ことも同じように大切なこと。理解して初めてできるいろいろな体験も、盛り込まれています。


ボーイ隊(小5~中3の4年間)

ボーイ隊に入りたての小学5年生「見習い」スカウトにとって中学2年生の班長はとてつもなく大きな存在。6人から8人いる班員に向けて毎回の活動への連絡網を回し、出欠をまとめ、教会でのルールや「スカウトハンドブック」の進め方を教え、いとも簡単に「立ちかまど」を作り飯盒でご飯を炊いてしまう。しかも隊長と「グリンバー会議」なるものでミーティングし…と、責任も重い。班長自身は先輩たちをまねて任務を遂行しているのだけど、その一つ一つに自分のマネジメント能力が育てられていることなど、思いもよらないのがおもしろいところ。日々の学校生活や部活との両立は厳しいこともあって、時には連絡網をすっ飛ばしたり、活動をさぼってしまったりもある。でも、それでもいい。「しまった…。ちゃんとやればよかった!」と感じることの方が大切。誰かに叱られてやらされるより、自分で感じ、こうしようと決めたことは頑張れるものだから。リーダーたちは、いつでも手を差し伸べる用意をして黙って見守っている。活動はスカウトミサのある第一日曜日と団行事だけが確実。あとは班で独自に決めた日程に沿って活動する。だって、ボーイ隊はぼくらの自治だからさ!

 ☆ある日のボーイ隊より
「新人歓迎キャンプ」

新年度が始まり、10月は1年目にとって初めてのキスリングでのキャンプ。班長や先輩に教わりながら念入りに荷物を詰め込むと、自分の体重と同じくらいの重さになって背負うこともやっと。一度座り込むともう立ち上がれない後輩を見て、ちょっとびっくりしているのは2年目勢。去年は自分たちがそうだったなんて、すっかり忘れている様子で立ち上がるコツや歩く時の姿勢を指導している。教会を出発してすぐ、班長から「しゃべるなよ。余計な体力を使うな。」と経験からくる言葉。おしゃべりが大好きな面々が黙りこくってとぼとぼと歩く。肩に食い込むキスリングの重さにくじけそうな仲間を、助けはできないけれどみんなでじっと待つ。「これって、ホントに新人歓迎キャンプなんすか…?」とぼやきながら、うつむき、汗を拭きつつ一歩一歩前に進む。ようやくキャンプサイトに到着しキスリングをおろすと…おお、なんという解放感!あっという間にいつものおしゃべりと大笑いが戻ってくる。さっそく班長を頼りにテントを立て、かまどを作る。配給の笛が鳴ると、滅入っていたのも忘れて飛んでいくのは1年目。なんだか知らないけれど、おれって役に立つかっこいいヤツかも。ペグを打つ音があたりに響くほかは、鳥の声と風の音だけ。心がとってものびのびする!


ベンチャー隊(高校生年代の3年半)

中学校を卒業するころになると、スカウト一人ひとりの関心や興味のある方向が少しずつはっきりしてきて、「みんなで一緒に」よりは個々に活動をすすめていく方がうまくいく。高校で新しい友達と知り合い、部活や課外活動を始めれば時間はいくらあっても足りないのが正直なところ。それでも教会は行けば誰かに会える居場所で、都合を合わせてリーダーや仲間と集まっては自分の興味のあることをさらに深めるプロジェクトを組み立てたり、将来について語り合う。自分だけのプロジェクトは、「植物を詳しく観察」「登山をきわめる」「写真集を作る」など、なんでもあり。うまく進めて「隼」や「富士」といった章をめざすのも、後輩のサポートをするのもよし。活動の基本はいつもスカウト自身。これまで磨いてきた「自分にできること」「やりたいこと」を思いきり伸ばしていこう。

 ☆ある日のベンチャー隊より
「やっぱ、バーベキューっしょ!」

ベンチャー隊はどこか自由。集会も平日の夜とか土曜日の夕方学校帰りに、なんていうことも増えてくる。ボーイ隊から新人スカウトが上進してくると、本当は近場でもキャンプに行きたいのはやまやまだけど、それぞれの都合があわないなら野外でおいしいものを作って食べるしかない。数年前は多摩川そばで実施したバーベキュー。「肉ばっかり買うなよ」とくぎを刺された買い出し担当のスカウトが、玉ねぎ、キャベツ、ナスにピーマンもごっそり購入。「そんなに野菜好きなの?俺は苦手だけど」と笑うリーダーの手前、山のように残されたピーマンは責任をもって新人スカウトが持ち帰り、自宅で完食したらしい。昨年は教会の中庭でやっぱりバーベキュー。しかもホットケーキつき。買い出し担当スカウトが何かとまちがえてホットケーキミックスを3袋も購入。バターやはちみつもいるよな、ともちろん購入。かなりの食通一家で知られる隊長が、歓迎会の後で後輩リーダーに向かって「あきれるだろ?でもさ、バーベキューとホットケーキ、意外と合うんだよ、うまかった。」と大笑いしている。ベンチャー隊の楽しさの秘訣は、「何でもあり」の余裕とたっぷりのユーモアだね。


ローバー隊(18~25歳の約7年間)

成人の部門であるローバー隊だけは、年齢が来ても自動的に上進することができない。「自分の意思で」「ちかいとおきてにのっとって」活動していくかどうかを決め、先輩スカウトたちに認められてこそ晴れて入隊することができる。創始者のベーデンパウエル卿が求める通り、カヌーを漕ぐように「自分で決めたコースを、いつも前を向いて積極的に進んでいく」ことを仲間の前で表明した者の集まりは、まさに14団のエンジン部分。これまでの年月で身体に染みついたスカウト精神は裏切らないし、お互いのちょっと弱いところも知り尽くした仲間はなにものにも代えがたい存在。個々に自分自身の社会性や特技をさらに磨きながら、ビーバー隊やカブ隊、ボーイ隊に所属してリーダーとして共に活動することを選択したり、ボーイ隊とベンチャー隊を対象としたプログラム「オーバーナイトハイク」の企画運営を行なったり。もちろん、キャンプにだって気楽に行っちゃうよ。

 ☆ある日のローバー隊より
「なんのためのオーバーナイトハイク?」

長い歴史を持つ14団オーバーナイトハイクだけに、企画や進め方もどこか伝統に縛られてしまいがち。だけど今年はちがった。一人の「誰のために、何を提供したいかをもう一度考えてみようぜ。」の発言がきっかけとなって、ローバースカウトと先輩である若手指導者が自由な発想のもとで何度も話し合って土台を作った。オーバーナイトハイク実行委員長になったスカウトが団会議の席で成人指導者たちを前に計画や手順を説明していくのにも、きちんと理解してもらえるよう書類を作り資料を用意し、話の持って行き方も打ち合わせする。「これまで通り」とか、「去年もやった通りに」が一切なく、実際に歩く後輩スカウトたちをいつも観察しながら進めているので実にフレキシブル。今年打ち出したテーマ「コミュニケーション」は、実行委員会にも反映されていてきめ細やかさとさりげないフォローが光っていた。「自分が楽しい」は大事だけど、「あいつも楽しいかな?」の思いやりには、誰かも巻き込む力がある。ローバー隊の活躍は、14団を盛り上げていく大きなカギ。


成人指導者(25歳~)

ローバースカウトで25歳の誕生日を迎えた成人、ボーイスカウト運動の素晴らしさを知りさらに広めてゆきたいと希望する成人が指導者です。スカウトと同じようにちかいをたて、先輩指導者から指導を受けながら活動に携わります。団内の一日研修はもちろん、世田谷地区や東京連盟が開催する一日講習会や1泊2日のキャンプ体験、3泊4日の隊専門の研修所に参加し学ぶことができます。14団では、指導者自身も自らの経験や学んだ知識に甘えてはいないか、スカウトの前に立って恥ずかしくない大人だろうか。ちかいとおきてに則して生活しているだろうか、と謙虚に自分を振り返り、よい社会人として成長していく努力を続けるべきだと考えています。